白と黒と時々ピンク。
待ち合わせの居酒屋は駅から歩いてジンワリ汗をかき始めるかどうかの距離にあった。

メイン通りから一本北に入った寂れた商店街の中だ。

料理は期待できなかったが、いつでも予約なしで入れて飲み放題が安かった。もしお酒の強い女子がいた場合の保険に一馬が選んだのだろうと思った。

女子受けは悪かったが僕たちはまだそこまで大人ではなかった。

店に着くと“いかにも”という席で一馬と涼が手をあげた。
涼は1つ下の後輩で一馬の家来みたいなやつだ。
合コンには必ず連れ出され一馬を引き立てるだけに使われる。

『お疲れ〜』

『お疲れっす!』

何に疲れているのか分からないが、社会人になってからこの挨拶が普通になった。

それと同時に周りは、いや、一馬は学生を子供扱いすることが増えた。

たった数ヶ月、社会人になっただけで何も変わっていないのに。と僕は肚の中で嘲笑した。

席は机のボックスタイプで6人がけだった。
その片側に3人の男が並んで座った。

周りからは3対3の合コンだと丸分かりだと思うと少し恥ずかしくなった。
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