白と黒と時々ピンク。
目の前に険しい表情を浮かべる香川先生の姿があった。

中肉中背で顔が大きい。
生徒の間では五頭身とか、モアイ像と呼ばれていた。

香川先生の担当は国語だったが、なぜか柔道を始めたらしく、選択授業の柔道に自ら参加していた。

普段、物静かな香川先生だったが、柔道の時間だけは人が変わったように乱暴になる。

香川先生との乱取りだけは本当に嫌だったのを覚えている。

『中岡、どうするか決めたのか?』

僕は返事に詰まった。

進学も就職もしないまま卒業するのは良くないらしい。

一応、電気科だけあって就職率は100%を保っていた。
僕のせいでそれが崩れるのだ。

先日、香川先生に『選ばなければ就職先を探してくるぞ』と言われ僕は、知り合いの会社に就職しようと思っていると答えていた。

ろくでもない仕事を紹介されたら、たまったもんじゃない。

『え、まあ、知り合いの会社に、、、』

『四月からか?もう採用は決まったのか?』

柔道の乱取りばりにグイグイくる香川先生。

もしかしたら、進学も就職もしない生徒を出す事で教師の評価が下がるのか。
その応急処置として、知り合いの会社に就職するという理由なら致し方ないとなるのか。
などとお世話になった先生を色メガネで見てしまう自分が嫌だった。
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