白と黒と時々ピンク。
ホットコーヒーの底が見え隠れしだしたころ、時間にして20分ほどだろうか、テーブルの上の携帯が振動と共に音を発した。

当時、好きだった一年に一度のお笑い番組のメロディーがメールだと知らせてくれた。

この頃の携帯電話の普及と飛躍には目まぐるしいものがあった。

1和音から4和音、16和音、32和音とまさに倍々ゲームだ。

のちに映画が見られるようになるなんて思っても見なかった。

僕は横のボタンを押して携帯を颯爽と開いた。
この機能も画期的でどこのメーカーも取り入れていた。

わざわざ二つ折りの携帯を開発しておいて、開く機能をつける矛盾に誰もツッコミはいれなかった。

メールの相手は仁美という女性だ。

この頃、携帯の普及と同時にコミュニティサイトが盛り上がっていた。

僕も流行りに便乗してよく利用していた。

もちろん出会い系サイトだ。

誰でも簡単に登録なしで書き込みが出来るのが便利で気に入っていた。

メールには“着いたよ”と簡単な言葉とその横に可愛らしい顔文字が付けられていた。

僕は“了解”と返信してマックを出た。
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