白と黒と時々ピンク。
マックを出ると一目でその人と分かる人を見つけた。

冬には似つかわしくない服装だったからだ。

階段を数段上がるだけで下着が見えそうなスカートに、首元が緩んだセーター。

肩からは黒色のブラ紐が覗いていた。

それが白色なら僕のテンションは多少上がっていただろう。

おそらく仁美さんであろうその女性は、路肩のガードレールに腰を掛け、携帯をいじっていた。

昨晩、会う約束をした際にお互いの写メールを交換していたにもかかわらず僕は再度、携帯の写真を見直す。

似ても似つかない現実に僕は苦笑いを浮かべた。

僕は自撮りが嫌いだった。

こういうトラブルになるのもそうだが、それ以前に顔で決める意味が見出せなかった。

可愛くても性格が悪ければ意味がないし、多少ブサイクでも愛嬌があれば問題ない。

そもそも明日会う約束をしたにもかかわらず、盛り過ぎの写真を送る時点で相手の立場を考えていない。

僕が売れないジャニーズの写真でも送っていたらどうするんだろう。

『騙されたー』と言って立ち去るのだろうか。

僕は渋々、仁美さんに近づいた。

このパターンの出会い方には慣れていたので僕はお決まりのセリフを用意した。

『良かった。写真通りの人で。』

そしてニコッと微笑む。

これでだいたいファーストコンタクトは満点だった。

少し緊張ぎみの仁美さんの顔から笑みがこぼれた。

『笑った顔の方が写メールの写真より100倍良いよ』と喉元まで出たがグッと飲み込んだ。

素直な気持ちだったが、それは彼女の自尊心を傷つけかねないと僕なりに配慮した。
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