白と黒と時々ピンク。
『ただいま。』

家に帰るといつものように飼い犬のチャッピーが出迎えてくれた。
取れるのではないかと思うほど尻尾を回しながら飛びついてくる。
良く顔を往復ビンタされるのも日課になっていた。


リビングを覗くと母親と妹が食事をしていた。

いつもの風景だった。

2つ年上の兄は、地元の国立大学に通っていた。
たった2つの違いだが、高校生と大学生では何か違う気がした。

おのずと会話も減っていった。

父は小さい頃から単身赴任で全国を飛び回っている。
なので家族で食卓を囲むことはほとんど無くなった。
寂しいと思ったことは一度もなかった。

中途半端に会えたり会えなかったりする方がよっぽど寂しいと思う。

遠距離恋愛は“寂しくても会えない”と割り切っているから上手くいくのだろう。

会える距離にいるのに会えないと大切にされていないと感じてしまう気持ちが少しだけ分かる気がする。

『早かったね。ご飯は?』

母親が聞いてきた。

二人分しか並んでいない食卓を見て

『大丈夫!軽く食べた!』

そう言って僕は二階に上がった。


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