トシノサ恋 ~永久に…君に~
「新井くんは…

前に、大切な物を守りたいって

言ったよね…。

強くないと守れないって。

それは、その通りだと思う。

でも、それが本当に守ってる事に

なるのかな?」

「…え?」

「大切な物を守りたいなら…

それなら、尚更…

暴力では解決はできない…。

守るって…強さだと思うから。

暴力は強さではないと思う。

新井くんにはその強さを

わかって欲しい……。」

そう言って、新井くんを見ていると

頭が急にクラクラしてくる。

あ、目が回る……っ。

ガクッ…

その場に倒れ込んでしまう。

「…紗和…っ…どうしたっ?」

慌てた声で私を抱き抱える新井くんを

見上げると…彼の優しい瞳を見つけた。

長い睫毛…キレイな瞳…。

優しい眼差し…あぁ……私はこの瞳が好き…

あんな鋭い目をして

誰かを傷つけたりする事なんか

君には似合わない……っ。

「…ごめん…急に目眩がして…

私…偉そうに言ってるよね…

たくさん助けてくれたのに…

本当はずっと怖くてたまらなくて…

何もできなくて震えてた…。」

気が緩んでいつの間にか涙が流れてくる。

「でも…新井くんには、本当の意味で

誰かを守れる人になってほしい…。」

「…紗和…」

スッ…

新井くんは私の涙を長い指で拭うと

私の唇にティッシュペーパーを押し当てた。

「喋りすぎ…

唇切れてるから…また血が出てんじゃん…

こんなに震えて、血…流しながら説教して…

自分の事より相手の事ばっか優先して…

心配してばっかりで…本当、バカ…だな。」

そう言って呆れた顔をしながら

でも優しく笑って私を見ている。

「……うん…そうかもね。」

私は、頷きながら彼をまた見上げると

「ごめん…あの日の約束、守れなくて…。」

そう言って私に頭を下げた。

「え…約束?…覚えてたの?」

「当たり前じゃん…。」

そう言いながら私に小指を見せる。

「…うん……」

そっか…覚えててくれた。

新井くん、覚えててくれたんだ……。
< 131 / 210 >

この作品をシェア

pagetop