トシノサ恋 ~永久に…君に~
「はい、お待たせ……!」

そう言って運んできたのは

クリームシチューと

ハンバーグだった。

「え……すごい、美味しそう……

これ、恵くんが作ったの?」

「あぁ……これは光兄が作っておいて

くれるんだ。

光兄の飯は、どれも美味いんだよ。」

「うん、美桜も光兄ちゃんのご飯

大好き!」

「じゃあ、いただきます。」

一口、シチューを食べると…

とってもクリーミーで美味しくて

今まで食べたシチューの中で一番だった。

「美味しいっ……!」

「…でしょっ!」

そう言って笑う二人を見て

私もいつの間にか

笑顔になってしまっていた。

「あの…お兄さんは

いつも何時頃に帰ってくるのかな?」

「……さぁ、わかんない…

多分、朝方…。」

「えっ、夕方から朝まで?」

嘘でしょ……。

「光兄ちゃん、バイト掛け持ちしてるよ。

だって、家に制服二つあるもん。」

「え……二つ?」

「光兄、バイトの事とか全然

話さないから。

父さんが死んでから…

俺らの為に、ずっと働いてるんだ。

学校も、行かなくなっちゃったし。

先生…その事で来たんでしょ?」

恵くんが心配そうな顔をしている。

「…そうなんだ…あの…お母さんは?」

私は、思いきって聞いてみた。

「…え…」

美桜ちゃんは、恵くんの顔を見上げる。

「…知らない…」

そう言って恵くんは、下を向いた。

え…

知らないって……。

「あ、ごめんなさい…

立ち入った事…聞いちゃったよね。」

私は、二人に頭を下げた。

すると、美桜ちゃんが明るい声を出す。

「…でもね、先生…

光兄ちゃんってすごいんだよっ!」

「えっ?」

妹の美桜ちゃんがニコッと笑うと

扉を開けて見せる。

そこは、押し入れだった。

え…何があるの?

美桜ちゃんは、私の腕を掴むと

押し入れの方に連れていく。

私が覗いてみるとそこには段ボール

が積み重なっていた。

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