トシノサ恋 ~永久に…君に~
「奥平先生…

昨日、新井と一緒にいたというのは

事実ですか?」

「…え…」

「実は今朝、私の所に手紙と写真が

届きましてね…。」

そう言って、校長は手紙と写真を

私の前に広げて見せた。

"白川南高校の奥平紗和は2年の新井光と

生徒と教師以外の不適切な関係にある。"

その写真には、私と新井くんが

一緒にいる所が事細かく写っていた。

二人で手を繋いでいる所や

抱きしめられている所まで…。

申し開きができないくらいの決定的証拠だ。

私は、ただ黙って…その写真を見る事しか

できないでいた。

「…奥平先生っっ…!」

「…あ、は…はい。」

「…これは、事実なんですね?」

「は…はい…。」

その瞬間…校長の深いため息が聞こえた。

「あはたという人は…仮にも教師でしょう…

何を考えてるんだっ!」

「…………申し訳ありません。」

こうなる事は、わかっていた…

だから、私は後悔なんかしていない。

"今日付で辞表を用意します"

そう言おうとした瞬間…

「…新井を退学にします。」

え…

「…え、今…何て…っ?」

「ですから新井は先日も

校内で暴行事件を起こしていますし

これ以上何か問題を起こされたら

他の生徒に示しがつきません。

彼を退学にして…

奥平先生は、しばらく休んで下さい。

その間に事態の収拾をはかりますから。」

「……そんなっ、彼を退学にするなんて…

待ってください!」

私は、校長に詰め寄った。

「…奥平先生、頭を冷やしなさい。

新井は、素行が悪い生徒です。

この手紙と写真も新井に対する嫌がらせ

でしょう…。

あなたみたいに真面目な方が

まさかこのような事になるとは

私もかなり驚きましたが…

あなたはまだ若い…

少しの間違いもあるでしょう。

それに教師としてこれからだ…。

もう一度やり直しなさい。

だから新井との事は、否定しなさい。

新井に脅されて…

無理矢理付きまとわれた事にしなさい。

いいですか…!

間違っても生徒の前で

認めたりしないでくださいよっっ…。

今日からあなたのクラスは

学年主任の平野先生に任せますから。」

…そんな…っ!

「…待ってください…

そんな事、私にはできません。

新井くんを悪者にするなんて…

できません。」

「…奥平先生、これは学校の決定事項です。

管理職始め、他の先生方にもすでに

そう伝えました。」

「…え…伝えた?」

「はい、今朝…

緊急に職員会議をしました。」

「…なぜ

私は呼ばれなかったんでしょうか?」

そう言うと、また校長は

深いため息をついた。

「…本校の職員がこんな事をして

それが公になったら

あなた…どうなるかわかりますか?

学校の信用は無くなり

来年度の入学希望者も減少するでしょう。

私は、学校長として…

やるべき事をしたんです。

だから、奥平先生…

あなたも教師を続けたいなら、従いなさい。

もし、ここを辞めて他の学校で

教師ができるなんて、考えているなら

それは甘いですよ。

あなたの様な問題を起こした教師を

雇う学校はありません。

いいですか…

もう一度言いますよ、頭を冷やしなさい。

それが嫌なら、辞めてもかまいません。

ですが新井を退学にすることは

変わりません。」

「…そんな…」

目の前が真っ暗になるって…

きっと、今みたいな事を言うんだろう…。

今にも膝から崩れ落ちそうになるのを

必死に堪えながら校長室を出ると

ちょうど一時間目のチャイムが

鳴り出した。

私……とんでもない事をしてしまった。

後悔しないなんてやっぱり嘘だ…。

後悔と罪悪感で胸が張り裂けそうだ。

新井くんが、退学になってしまう…。

彼を守る事ができなかった。

ポタッ…

気がつくと私の手には大粒の涙が落ち

溢れ出る涙がとまらなかった。
< 168 / 210 >

この作品をシェア

pagetop