トシノサ恋 ~永久に…君に~
どういう事?

その場に呆然と立ち尽くして

いると…

バシッッッッ!

ドスッッ!

今度は私の背後で

鈍い音が2回聞こえた。

振り返ると、他の2人も

倒れ込んでいた。

「…えっ!」

私が驚きの声を出すと…

「…紗和」

聞き覚えのある少し掠れた声…

ゆっくりと振り返る。

そこには…

会いたくて、会いたくて

仕方がなかった人が立っていた。

「…あ、新井くん…っ。」

驚きと共に

一瞬で涙で視界が霞んでいく…

次から次に涙が溢れて

頬を流れていく…。

「…どうして、いるの?」

震える涙声でそう言うのが精一杯

だった。

彼は、ゆっくり側に近づいて

私の真正面に立った。

「今、バイト帰りで…

そこのコンビニ入ろうとしたら

紗和に似てる後ろ姿が見えて

走って追いかけてきた。

まさか、本当に紗和だったなんてな…

とにかく、良かった…無事で…っ。

何してるんだよっ…

こんな奴らに絡まられるなんて…」

新井くんが私の顔を覗き込む。

「…バイトって…?

どこでバイトしてたのよっ…

今までの所、全部辞めて…

引っ越しちゃって…

携帯も繋がらなくて…

捜してたんだよ、ずっと…

会いたくて…私………」

言葉に詰まりながら

泣きながら見上げる。

彼の少し困った様な顔…。

見ない間にまた前髪が伸びて

隠れていたけれど相変わらず

優しい瞳が隙間から見えた…。

そんな彼を見ると…

急に鼓動が激しくなり一瞬で

胸を貫かれてしまう。

真っ直ぐに見つめられ

私の胸がより一層激しくなる。

彼が私の方に近寄ろうとした時…

その表情が凍りついた。

「…ふ、ふざけんなよ…っ!」

私の背後から怒鳴り声が聞こえる。

「紗和っ!危ないっっ!」

そう言い私の前に立ちはだかろうと

するが男の方が早く私の腕を掴み

私の背後から首に冷たい物を

突きつけた。

「…っ!」

それがナイフだとすぐに気付いた。

「ぶっ殺す!この女、ぶっ殺す!」

え…っ…殺す?

私の首に鋭い痛みが走る…

「…痛っ…」

「…紗和っ!」

痛…切れた…。

首筋に血が滲んでいく…。

私の血を見た途端…

彼の顔が憎悪でみるみる歪んでいく…

「………何しやが…っ。」

呻くような低い声を吐き出しながら

鋭い表情でその男を睨みつける。

「…やるなら、俺を殺れよ…

その人は関係ないだろ…

殴ったのは、俺なんだから…

だから、離せよ…。」

ゆっくりと、新井くんが

近づいてくる。

「いい度胸だなっ…なら、お前を

殺ってやるよ…こいよ。」

ナイフを新井くんに向ける。

「…新井くんっっ…ダメだよ!」

「…いいからっ!」

新井くんは、私の言葉を

制止して近づいてくる。

そんな…っっ

どうして、こんな事に…

私が彼を捜したから?

会いたいって思ったから?

私が彼を好きって思うと

どうしてか、こうなるんだ。

でも、もう後悔だけはしたくなかった…。

もし…新井くんに何かあったら…

死んじゃうかもしれない…っ。

「や…やめて…!お願いします…

言うこと聞くから…何でもするから…

彼を殺さないで…。」

私は、泣きながら頼んだ…。

「ハハッ…本当に何でも

言うこと聞くか?」

「き…聞きます…」

私は何度も、頷いた。

お金を渡せば、何とかなるかも…

「なら、今…服を脱げよ…っ。」

「…えっっ…!?」

服…を脱ぐって?ここで?

「出来ないのか?」

「で、出来ます…っ。」

恐い…でも、言うとおりにしないと

新井くんに何するかわからない。

「おいっ、この男を掴んどけっ。」

そう言って新井くんを2人がかりで

捕まえる。

新井くんは、驚いた顔で私を見ながら

首を横に振り続けている。

「…紗和っっ!やめろっっ…」

もう1人の男が私に

ナイフを突きつけながら

私に服を脱ぐように促す。

私は、ワンピースのボタンに

ゆっくりと手をかけた。

胸の所までくると

下着が見え、胸元が露になる。

その瞬間…

男達が、嫌な笑いをするのと同時に

「…やめろっっ…」

新井くんの苦しそうな声が聞こえた。

「頼む…もう、やめてくれ…っっ…

もう…やめてくれ…!!」

彼は、首を項垂れながら掠れた声で

泣きそうな声で叫んだ…。

「やめるわけないだろっ…。」

新井くんを掴んでいた男が私の方に

近づいてくる。

「あ、お前っ!何やってんだよっ!

そいつを押さえてないとっっ…!」

その瞬間…

新井くんは勢いよく飛び出して

ナイフを男から奪い取ると

そのまま私の上に覆い被さった。

「はぁ?ふざけんなよっ!お前…」

「そこ、どけよっっ!」

「邪魔なんだよっっ!」

男達の怒鳴り声が聞こえる。

ドカッ!ドカッ!ドカッ!

新井くんが私の上で

何度も何度も蹴られているのが

わかった。

「……うっっ」

新井くんの苦しそうな声が耳元で

聞こえてくる。

「コイツ…マジでイラつく…

そうだ…あれで殴ってやろうぜ…」

え…何?

ガラガラガラ

アスファルトに金属が擦れる音…

ドスっっ!

鈍い音がした。

ドスっっ!

えっ…何っ?何で殴ったの?

「や…やめてっっ…もう、やめて…

十分でしょ……もうやめてっっ…」

彼の体に覆われて、殴られる度に

その衝撃が、私にもわかった。

ドカッ!

「…きゃっ…っっ」

新井くん…死んじゃう…っっ!

私の声は悲鳴のようになっていく…。

それでも、何度も殴り続けた。

「嫌…もう…やめ…」

どれくらい経っただろう…

「はぁはぁはぁはぁ…

しぶてーなぁっ!」

「はぁはぁ…っっ

いい加減…倒れろや…っっ。」

「はぁはぁ…こいつ…何なんだよ…

ヤバイ…コワッ…化け物かよ…」

そう言うと、新井くんの体を

引っ張ろうとしていた。

グッ…ッッ

「こいつ…まだ踏ん張ってる…

信じらんねぇ…っっ」

「はぁ…ここは…死んでもどかねぇ…

足りねえ…なら…もっとやれよ…っ

その代わり…

二度と…この人に手を出すな…はぁ…」

新井くんが苦しそうな声を出す。

「…新井くん…私は、もういいから…

これ以上、庇わないで…お願いっ。」

私は、泣きながら彼に言った。

「……この人に…手を出すな…」

新井くんは、私の言葉には答えず…

ただ一言そう言った。

「はぁ?バカじゃ…ね

…言われなくともお前みたいな

ヤバイ奴…二度と関わるかよっ!」

「マジ…っキモ…っっ!!」

男達がそう口々に吐き捨てると

段々と足音が遠ざかっていく。
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