トシノサ恋 ~永久に…君に~
「…はぁ、新井くん…っっ

新井くんっ…!」

私は、叫びながら彼の下から這い出て

彼の頭を膝の上に乗せると

「…新井くんっっ…ちょっと…

目を開けて…ちょっと…っいや…

死なないでよ…っっ。」

そう言って彼を揺さぶった。

その瞬間…彼の顔が少し緩んで

「…ふっ…死なねーよっ…」

そう言うと、ゆっくりと目を開けた。

「…あ、新井くん…良かった…

生きてた…良かった…良かった…」

私の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

「……また、泣いてる…」

彼がゆっくりと手を私の首に

手を伸ばした。

「首…痛くない?」

彼は、私のケガを心配そうに見ていた。

「…痛くない…大丈夫だから…」

その手をギュッと握りしめる。

「…何で、こんな事…

本当に死んじゃったら…

どうするのよ…っ。」

「…紗和こそ、あんな事して…

本当、バカ…マジで最悪じゃん。」

そう言うともう一方の手で

私のはだけた胸元を手繰りよせた。

「…だって、新井くんを殺すって…」

涙で霞む目を擦りながら

彼の瞳を覗き込んだ。

彼とこんな近くで目が合うのは

いつぶりだろう…

睫毛が長い綺麗な目。

その瞳は、いつの間にか

大人の男らしさが出てきていた。

「…あんなのに殺られるわけないだろ…

紗和にナイフ向けてなきゃ…

一瞬で伸してやった…。

けど、紗和にナイフ向けられて…

足がすくんだ…

初めて…怖いって思った…。

紗和にあんな事して…

マジで殺してやりたかった。

でも、紗和と約束したし…

暴力だけじゃ本当に大切な物は

守れないって…わかった。

そう思ったら…

自然とこうなってた…。」

そう言って新井くんは、私に

笑いかけた。

あの日見た時と同じ可愛い笑顔…。

「…新井くん…

こんなにやられて…

傷だからけになって…ごめんね…。

…何度も私…新井くんに

暴力はいけないって頭ごなしに…

言ってばかりだった。

何も知らなかったのに

偉そうに言って、ごめんなさい…。

新井くんは、理由なしに

ケンカなんてしない。

ずっと前からそうだった。

守りたかったんだよね。

ずっと…そうだったんだよね。

死んじゃうんじゃないかって…

本当に…恐かった…。

生きてた…良かった。」

私は、彼の顔に触れながら

「ありがとう…。」

そう何度も言った。

そして、彼の顔に近づくと

両手で優しく顔を包み込んだ。

その瞬間…

彼の手が私の頭を

ギュッと優しく押さえつけると

私の顔がゆっくりと

彼の唇に落ちていった。
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