トシノサ恋 ~永久に…君に~
"すぐに大人になるから…

絶対にすぐに迎えに行くから…

待っててほしい…。

俺…紗和がいない世界なんて…

もう無理…"

「…無理…」

無意識にあの言葉を口走っている自分にハッと
した。

あれから…彼が無事に高校を卒業して

働きながら通信制の大学に

進学したという…。

ここに引っ越す前に

平野先生から連絡をもらった。

光くんとは、あの日…校門で別れたきり

一度も会っていない。

あの日、会わないと決めて…

だから携帯の番号も変えて

彼の連絡先も消した…。

そして…私は、この町でもう一度

一人でやり直すと決めたんだ…。

それなのに…

彼の言葉が…消えない。

頭の中で…何度も、繰り返される。

彼の笑顔を思い出しては…

それを、黒く塗り潰していく作業。

もう、思い出してはいけない…。

それなのに…またすぐに思い出す。

彼の声を聞きたくて…

あの笑った顔を見たくて…

どうしようもなく苦しくなっていく。

…光…くん

会いたい…もう一度だけでいいから。

あなたに…会いたい。
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