トシノサ恋 ～永久に…君に～

「ヒッ！」

嘘っ、見てるのバレた？？？

私も……殴られるっ？！

……こんな事になるなら

ちゃんと通報しとけば良かったぁ…っ。

「あ…あの、すっ……すみません…

私…何にも見てませんから…っ。

すみませんっ……。

見逃して下さいっ…っっ！」

私は、必死に叫んだ…。

「……この猫、あんたの？」

「…へっ…？ね…猫？」

私が恐る恐る顔を上げると

その男は、髪の毛がびしょ濡れで

前髪が顔にかかっていたので

顔はよく見えなかったが

その声は、さっきの怒鳴り声とはまるで

別人みたいに落ち着いた声をしていた。

少し、掠れたような低いハスキーボイス。

「あ…この猫ですかっ…？

ちっ、違います、私のじゃないです。

で、でも…ケガしてるみたいで…

何か、背中から血が…でてるみたいで…。」

「…それ、違う…スプレーかけられてた。」

「…え、スプレー？」

そう言われてよく見てみると背中の赤は

血ではなかった。

「あっ、本当だ…良かったぁ。」

スプレーだったんだ…。

怪我じゃなくてよかったぁ……。

「…………」

あれ、さっきから…視線を感じる。

その男は、何も言わず私の方を

じっと見ていた。

えっ…何…？

こ、恐いんですけどっ…。

気づかない振り…気づかない振り…。

刺激しないようにしなきゃ……。

「あ、じゃあ…これで……。」

もう、帰ろうっ…！