ホテル御曹司が甘くてイジワルです


見学させてもらった科学館をヒントに、いっそ古い座席を全部撤去してしまおうか、なんて館長と話し合ったり、夏休みの工作教室を企画したり大人向けの天体観測会を開いたり。
少しでもお客さんが増えるように奮闘中だ。

「やっぱりプラネタリウムや天体観測だけじゃなく、子供たちにもっと気軽に星に触れる機会を作るっていいね」

館長の言葉にうなずいた。

「本当ですね。プラネタリウムのない地域に行って、星空の出張教室みたいなのを開いたりもしたいですね」

自分がプラネタリウムや天文台のない田舎育ちだからなおさら思う。
もっといろんな場所でいろんな人に星の美しさや面白さを伝えていきたい。最近そう強く思うようになった。

もしかしたら、強い信念を持って働く清瀬さんの影響かもしれない。

ふいに手を止め自動ドアの方を見やる。誰もいない、閉じられたままの自動ドア。
そこから入ってくる背の高いシルエットを想像して、慌てて首を横に振った。

スイートルームで会って以来、清瀬さんには一度も顔を合わせていない。

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