ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「では夏休みの工作教室をはじめたいと思います」
私がそう言うと、「はぁい!」と元気なお返事が返ってきた。
普段は待合室として使っているスペースに四つ長テーブルをならべ、ひとつのテーブルに三人ずつ。合計十二人の小学生が参加してくれた。
近くに住むサッカー少年の大輝くんも来てくれている。
目が合うと、にっと白い歯を見せ小さく手を振ってくれる。
「今日は空き缶を使ってキャンドルホルダーを作ります。缶のふちはギザギザしていて危ないし、釘やハンマーを使うから十分注意してください」
コーンやフルーツが入っていた大きめのスチール缶に、釘とハンマーを使って穴をあけていく。
「こうやって小さな穴を開けて、好きな星座を象ってみてください」
見本に作ったキャンドルホルダーを掲げてみせる。
北斗七星やオリオン、カシオペアに白鳥座。子供達でも知っていそうな、わかりやすい星座を配置してみた。
この中でキャンドルを灯せば、細かな穴から光が漏れて夜空に光る星のように、暗闇の中に星座の形が浮かび上がる。
「お姉さん! 好きな形にしていいの?」
大輝くんに質問され、本当は星座図鑑や写真を見て、実際の星の並び通りに穴をあけてもらおうと思ったけど……と少し考えてからうなずいた。