ホテル御曹司が甘くてイジワルです



苦しさにどうすればいいのかわからなくてもがいていると、水をかきわけるようにして大きな手がこちらにのびてくるのが見えた。

そのまま私の腰を抱き引き寄せるたくましい腕。
一気に水面に引き上げられて、空気が肺に入るのと一緒に激しくせきこんだ。



「大丈夫か!?」

大量に水を飲み、ゴホゴホと苦しげに咳をする私を真剣な表情でみつめる清瀬さん。

「す、すみませ……」

私のせいで彼までプールに入らせてしまった。申し訳なくて苦しい呼吸の合間にあやまると、返ってきたのはあきれたような甘い微笑み。

「本当に、真央は星を見上げてばかりいるからすぐに転ぶな」

確かに、転びそうになったところを助けてもらったのは、これで三度目だ。

「大丈夫だったか?」

私の濡れて頬にはりついた髪を指先でかきあげながら、確認するように私の顔をのぞきこむ。
ようやく呼吸が整いようやく落ち着いてきた私は、清瀬さんの肩にしがみつきながらうなずいた。

「はい。真っ暗な水の中に急に落ちて、気泡が星みたいに見えて、まるで宇宙の中にいるみたいでした」
「は?」
「幻想的で怖いくらい綺麗で、天の川の中を泳いだらこんな気持ちなのかもしれないって思いました」

この感動を伝えたくて早口になる私を見て、清瀬さんがあきれたように笑う。
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