ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「まったく。溺れかけたっていうのに、なにのんきなことを言ってるんだ」
冷静になってみれば、ふたりともプールの中で全身ずぶぬれだ。清瀬さんの仕立てのいいスーツも、私の綺麗なドレスも。
清瀬さんの髪から透明なしずくが滴っていた。
片手で私の腰を抱きながら、もう片方の手で濡れた髪を邪魔臭そうにかきあげる。
その仕草が色っぽすぎて、目をそらし平静を装いながら頭をさげる。
「すみません。せっかく用意してくれた素敵なドレスを……」
「そんなことはいいんだけど、目のやり場には少し困るな」
目のやり場って、なんだろう。
不思議に思って清瀬さんの視線を追えば、彼の腕の中で抱きしめられている私の胸元にいきついた。
オフショルダーのドレスが濡れて体にぴたりとはりつき、体のラインがはっきりとわかる。
しかも抱き寄せられ体が密着した状態でいることに気が付いて、一気に頭に血が上った。
慌てて清瀬さんの肩から手を離し、逃げるように胸を押しやると、どぼんと体が水の中に沈む。
「なにやってるんだ」
また水の中でもがいた私を引き上げながら、清瀬さんがくすくすと笑った。