ホテル御曹司が甘くてイジワルです
目を見開いた私を腕の中に閉じ込めて、また甘いキスが降ってくる。
額にまぶたに頬に。だけど唇にはキスしてくれなくて、どうしてと視線で問うと、意地悪に微笑まれた。
「真央は?」
そう追及され言葉につまる。
「真央は、俺のことをどう思ってる?」
「ど、どう思ってるって、清瀬さんは坂の上天球館をつぶそうとしている敵だし……」
目をそらしてもごもごと言うと、顎をつままれ正面を向かされた。
「坂の上天球館を買収するのはやめた。素晴らしいプラネタリウムになるように資金面でも技術面でも協力する。式場として利用できるように新しく契約を結ぼう」
そうなれば清瀬さんは敵ではなく、ビジネスパートナーということになる。
言い訳をひとつ打ち消され、顔をしかめながらまた口を開く。
「でも、清瀬さんはプレアデスグループの御曹司で、私とは住む世界が違うしとてもつりあわないし……」
「これまで真央とふたりで一緒に過ごして、世界が違うとか釣り合わないと思ったことは一度もない。むしろ真央と一緒にいると落ち着ける。万が一誰かに反対されたとしても、自分の好きな女はどんなことをしても守ってみせるよ」
「でもでも、私は恋愛に向かないし、一度付き合った彼ともうまくいかなくて……」
「真央」
言い訳を並べ続ける私に、清瀬さんが強い口調で名前を呼んだ。
はっとして顔を上げると、真剣な瞳にみつめられた。
「今真央を抱きしめてるのは、その昔の男じゃなくて、俺だ」
私に向けての愛情と一緒に、嫉妬をにじませてそう言う。