ホテル御曹司が甘くてイジワルです
翌日、お昼前に待ち合わせをして清瀬さんとおでかけすることになった。
私の家から近くわかりやすいからと坂の上天球館の前で待っていると、白い車が路肩に停まる。
気付いて私が近づくと、わざわざ運転席から降りてきて助手席を開けてくれる。清瀬さんの自然な紳士っぷりはもう慣れているはずなのにやっぱりドキドキしてしまう。
清瀬さんとふたりきりで会うのは、あのプールに落ちた日以来だな。なんて思いながら運転席に座る清瀬さんを盗み見る。
相変わらず整った横顔。綺麗な二重に通った鼻梁、そして形のいい唇。
この唇と、キスをしてしまったんだ。なんて思った途端、一気に頬が熱くなる。
「どうした?」
赤信号で車が停まると、清瀬さんが不思議そうにこちらを見た。
「い、いえ……っ!」
あなたとのキスを思い出してドキドキしてました、なんて言えるわけがなくて、首を横に振って誤魔化す。
すると清瀬さんがハンドルに置いていた片手をこちらにのばし、私の顎をすくいあげた。
きょとんとしている私の視界が、清瀬さんに遮られる。
唇にやわらかい感触が押し当てられ、すぐに離れた。
なにをされたか自覚して目を丸くした私に、もう一度短いキスを落とされる。