ホテル御曹司が甘くてイジワルです
車は街を抜け、山間の道を行く。
鮮やかな濃い緑の木々がまぶしい太陽の日差しをさえぎり、木漏れ日が揺れて気持ちいい。
途中、綺麗な湖を望める展望台や、小さなお土産屋さん。軽食やソフトクリームを売っているお店によりながらドライブを楽しむ。
甘いものが苦手な清瀬さんにソフトクリームをすすめると、顔をしかめながらも食べてくれたのが嬉しかった。
「こんな渋い顔でソフトクリームを食べる人をはじめて見ました」なんてからかって笑っていたら、車の中で口直しだとばかりに長く激しいキスをされて音を上げた。
助手席でくたりと力が抜けてしまった私を見下ろして、満足げに笑う清瀬さんが憎らしい。
「清瀬さんって意外と負けず嫌いで大人げないですよね」
「知らなかった?」
ふくれっつらの私ににやりと笑ってまた短いキスをくれる。
彼のなにげない仕草や表情。
いろんな一面を見るたびに、恋をしているのを実感して、胸のあたりがくすぐったい。
火照る頬をさましたくて助手席の窓をわずかにあけた。
「天気がいいですね」
日差しは強いけど、高度が高いせいか緑が多いせいか、吹く風は涼しくて心地いい。
「だけど、夕方から崩れてきそうだな」
そう言った清瀬さんの目線の先を見ると、たしかに山の向こうに雲が広がっているようだ。
車だから多少の雨でも問題ないだろうけど、運転する清瀬さんは大変かもしれない。
「目的地は遠いんですか?」
「いや、もうすぐだ」
そう言った清瀬さんにうなずいて、シートベルトをしめた。