ホテル御曹司が甘くてイジワルです
次は地元の契約農家や、鹿肉や猪肉などのジビエを取り扱う食肉業者などを視察するそうだ。
まだ正式に話を受けてくれると決まったわけではないけれど、何度お店に足を運んでも門前払いだったことを考えれば、ものすごい前進だ。
相変わらず清瀬さんは忙しくて、なかなかふたりきりでゆっくり過ごすことはできていないけど、時折天球館に顔を出してくれたり、電話くれる。
きちんと気持ちを通じ合わせたせいか、わずかなやりとりでもすごく幸せだと感じる。
満たされているって、こういうことなんだと実感する。
けれど、夏休みも今日で終わり、明日から改装がはじまるというときに、思わぬ人がやってきた。
胸までのゆるく波打つ髪に、綺麗な顔立ち。スーツ姿がとても似合う、秘書の三木さんだ。
事務所の自動ドアから入ってきた三木さんは私を見つけて軽い会釈をする。
清瀬さんと一緒ではなく、ひとりでここへやってくるなんて、どうしたんだろう。