ホテル御曹司が甘くてイジワルです

「表向きは社会勉強ということで昴さんの秘書をしていますが、お互いの親の間で縁談の話はもうまとまっていて、実質は結婚までの準備期間です。私たちが結婚すれば、海外展開を見据えているプレアデスグループにとって三木コーポレーションの存在は大きな力になる」

政略結婚。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
そんな両家の思惑の元で、三木さんが清瀬さんの秘書をしているとなればふたりは婚約者なんだろう。

確かに、ホテル界のプリンスとまで言われている清瀬さん。この先日本だけではなく海外にまで手を広げ発展していくプレアデスグループのトップの妻として、美しく家柄もよく海外の不動産を扱う企業の令嬢でもある三木さんは最良の女性だ。

そう考えて、くらりとめまいがした。思わず額を抑えてうつむく。

その時、清瀬さんの言葉を思い出した。

『……小さなころからグループの後継者として育てられてきて、名前まで社名をそのままつけられて、自分の存在価値は会社を継ぐことだけなんだと思ってきた』

心の奥に蟠る孤独を、吐き出すようにつぶやいた言葉。

グループを背負うべくして生まれてきたことを突きつける、その名前。


いつだって自信たっぷりに見えた彼は、水面下ではずっと悩んで苦しんできたんだ。
だったらなおのこと、彼のそばにいたいと思う。

彼の孤独や苦しみに寄り添い、理解してあげられる存在になりたい。

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