ホテル御曹司が甘くてイジワルです
ひとしきり笑ったあと母が目元にうかんだ涙をぬぐい、一息つく。
「清瀬さん。あなたがちゃんと真央を愛してくれているのは伝わりました」
そう言われた清瀬さんは、まっすぐに母を見つめながら頷いた。
「不器用ですこし頑固な娘ですが、よろしくお願いします」
母が真剣な表情で頭を下げる。
なんだかその光景に胸がいっぱいになってしまって黙り込んでいると、母の視線がこちらに向けられた。
「真央」
名前を呼ばれ、思わず背筋をのばす。
「あなたは照れくさがっているけど、清瀬さんのように愛情を言葉にしてくれる人はとても少ないのよ。普通の男の人は言わなくても伝わるものだと思っているから」
「はい」
無口でお酒ばかり飲んでいた父の記憶がよみがえり、私はふかく頷いた。
「清瀬さんの愛情にちゃんと感謝して、与えられることを当然だと思わないこと。そして、何年たっても愛される努力とお互いを理解しようとする努力を怠らないこと。そうすれば、きっと幸せになれるから」
「……はい」
母の言葉に鼻の奥がつんと痛くなってうつむくと、膝の上においていた手に清瀬さんの手が触れた。
テーブルの下で大きな手のひらにぎゅっと包まれて、胸がいっぱいになってさらに瞳が潤んでしまった。