ホテル御曹司が甘くてイジワルです


比べようがないからわからないけど、一緒に過ごした昨夜は、清瀬さんはとても優しくしてくれたと思う。

だけど、はじめての経験に翻弄された私は緊張のせいもあったのか、朝起きるとひとりでは立てないくらいよろよろになってしまっていた。
ベッドから起きようとして力が入らずその場にすとんとしゃがみこんでしまったとき、腰がくだけるってこういうことをいうのかと妙に納得できた。

「真央が立てなくなったのは俺の責任だから」と清瀬さんが私を抱き上げ、徹底して甘やかされて今に至る。

膝の上で真っ赤な顔でもぐもぐと口を動かす私を見て、清瀬さんは機嫌良さそうに笑っていた。

左手で私の髪をなでながら「次はなにを食べたい?」と問われる。

「私はいいですから、清瀬さんがちゃんと食べてください」

私に食べさせてくれるのもいいけど、清瀬さんはさっきからぜんぜん食べていない。

「じゃあ、食べさせてくれるか?」

顔をのぞきこまれ、頬が熱くなる。
食べさせてもらうのも恥ずかしいけど、彼にあーんなんて食べさせてあげるのも照れくさい。

「自分で食べてください」
「真央を膝に抱いているから食べづらい」
「私を下ろしてくれればいいと思いますよ」

そんなやりとりをしていると、来客を告げるインターフォンが鳴った。

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