ホテル御曹司が甘くてイジワルです
私、遠山達彦は高級ホテルを展開するプレアデスグループで秘書をしている。
私のボスである副社長、清瀬昴はどうやら恋をしているようだ。
彼が副社長室のデスクで読み込んでいるのは、一通の調査報告書。
オーベルジュの建設予定地の隣に建つ、『坂の上天球館』というプラネタリウムの経営状態を調べたものだ。
プラネタリウムといえば営利を目的としない公的な施設が多い中、個人が経営する私設のこのプラネタリウムはそうとう経営が厳しい。
どんなに楽観的に見てもこのままではあと数年で行き詰まり、閉館に追い込まれるだろう。
そんな崖っぷちのプラネタリウムで働くひとりの女性に、ひとめ見ただけで惚れてしまったらしい副社長は、報告書を見下ろし険しい表情を浮かべている。
「副社長。そんな難しい顔をして、どうかしましたか?」
白々しくそう問いかけると、副社長は視線を上げこちらを見た。