ホテル御曹司が甘くてイジワルです
 

『坂の上天球館』のオーナーである長谷館長について調べたものだ。

「この施設の館長は星についてはプロですが、経営にはまったくの無頓着です。現状に満足していて、経営が傾いている実感もあまり持っていないようです」
「わざわざ調べたのか」

長谷館長の氏名、年齢、略歴などが記された報告書をめくりこちらに視線を向ける。

「不要でしたか?」
「いや、ありがとう」

うなずいた副社長があらためて資料を見る。
しばらく考えこんだあと、彼は顔を上げて私を見た。

「遠山。悪いが『坂の上天球館』の買収の準備を進めてくれ」
「メリットのない買収はしないのでは?」

彼の言葉に驚いて問うと、副社長は表情を変えずにこたえる。

「確かに、プラネタリウムのまま活用するならメリットはない。だがあの石造りの倉庫や白壁のプラネタリウムドームにはほかにはない魅力がある。ドーム内の座席や投影機を撤去して改装すれば、カフェとしても結婚式場としても使えそうだ」


 
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