ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「短い夏の夜ですが、夏の星座はとても賑やかです。暗闇に目が慣れるにつれ浮かび上がってきた、夜空に淡いインクをこぼしたような白い帯が天の川。天の川は一年中見ることが出来ますが、夏から秋にかけて一層濃く、美しく輝きます」
ドーム型の天井に、投影機で夏の星座を映し出す。
私は解説をしながらドーム内の客席を見渡した。
ドームの後方にあるプラネタリウムを操作するためのコンソールから見ると、どの席の背もたれが後ろに倒れているかひと目で分かる。
南に向かって扇型に配置された座席。
綺麗な曲線を描く背もたれの中で、ぽつんぽつんと虫食いのように欠けて見えるのが、お客様が座っている場所だ。
平日の昼間とはいえ、この客数は少しさみしい。
圧倒的に空席の多いドーム内を見渡した私は、星座解説を続けながら心の中で小さくため息をついた。