ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「三か月猶予をやる。その間にプラネタリウムをどうやって立て直すのか、見せてみろ」
その言葉に、私は口元を引き結んでうなずいた。
ただの御曹司の気まぐれに振り回されているだけかもしれないけど、やるしかない。
その後、ひとりで帰れると何度言っても聞いてくれない清瀬さんに押し切られ、車で家まで送ってもらった。
清瀬さんもお酒を飲んでいたので、運転してくれたのは彼の秘書の遠山さんという眼鏡をかけた四十歳前後の落ち着いた男性だった。
「秘書って、この前一緒に坂の上天球館に来た女性じゃないんですか?」と問うと、「彼女は私のサポートなんですよ」とハンドルを握る遠山さんが教えてくれた。
清瀬さんひとりに、ふたりの秘書がついているなんて。
それだけ清瀬さんが多忙なんだと驚いてしまう。
本当に、私とは別世界に住む人なんだ。
車の後部座席に座り、遠くなるプレアデスホテルを見上げながらそう思った。