ホテル御曹司が甘くてイジワルです



緊張しながらやってきたプレアデスホテル。相変わらず豪華な入り口に尻込みしてしまう。

けれどエントランスに立つドアマンは、あきらかに動揺している場違いな私に対してもおだやかな微笑みを向けてくれた。
両開きのドアが開かれ「いらっしゃいませ」と恭しくあたまをさげてくれる。丁寧な対応に、まるで自分が重要なゲストになったように思えた。



広く豪華なロビーに入ると、年配のご夫婦が辺りを見回していた。
はじめてプレアデスホテルに来て豪華さに戸惑っているのかな? なんて親近感を感じていると、すぐに気づいたスタッフの若い男性がふたりに近づく。

「なにがお手伝いできることはございますか?」

柔らかい声に振り返ったご夫婦が、少し恥ずかしそうに顔を見合わせる。

「ディナーの予約をしていたんですが、少し早く着きすぎたようで」
「そうでしたか。何時のご予約でしたか?」
「十九時に……」

漏れ聞こえてきた会話につられて腕時計を見る。
また十八時半にもなっていない。確かに到着が少し早かったようだ。
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