ホテル御曹司が甘くてイジワルです


歴史ある老舗ホテルがたくさんある中で、日本の高級ホテルといえばプレアデス、と呼ばれるまでに成長したのは、このスタッフの意識の高さも理由のひとつなんだろう。
徹底したサービスにおもわず感動してため息をつくと、遠山さんがくすりと笑う。

「とはいえ、スタッフひとりひとりがここまで動くようになったのは、副社長のおかげなんですよ」

清瀬さんが? 不思議に思って遠山さんのことを見上げる。

「彼がホテルの後継者として経営に関わるようになって、まず一番に進めたのが、従業員の待遇をよくすることです」
「お客様ではなく、従業員のですか?」
「プレアデスホテルは高級です。お客様に高い代金を支払ってもこのホテルを利用したいと思ってもらうためには、徹底して質の高いサービスを提供しなければならない。スタッフひとりひとりが職場の環境に満足して仕事に誇りをもって働いていなければ、心からのおもてなしなんてできるはずがないと副社長は考えたんです」

その言葉を聞きながら、ロビーから見えるスタッフを目で追う。
みんな背筋を伸ばし、微笑みをたたえ、きびきびと動く様は見ていてとても気持ちがいい。

< 83 / 278 >

この作品をシェア

pagetop