ホテル御曹司が甘くてイジワルです
努力の甲斐あって、少しだけど利用者は増えてはいる。
だけど、ほとんどのお客様は一度来てそれきりだ。
リピーターが増えなければ、先は厳しい。
石造りの事務所やレトロなプラネタリウムドームの外観を写真に撮ってSNSにアップしてみたら、思いのほかたくさんの反応があった。
写真を見た若いお客様が、遠方からわざわざこの『坂の上天球館』目当てで来てくれたこともある。
だけど、『建物は素敵だけど、プラネタリウムは古くて普通だねー』なんて感想を言いあっているのを聞いて、がっくりと肩を落としてしまった。
どうすればもっとたくさんの人に喜んでもらえる施設になるだろう。
毎日毎日悩んでいるけど、答えは一向に見つからないままだった。
事務所のデスクに座り眉間にしわを寄せてうなっていると、「夏目さん、顔が怖いよ」と館長に突っ込まれてしまった。
「すみません……」
はっとして、深い溝ができた眉間を指でマッサージしながら振り返ると、カフェオレの入ったマグカップを持った館長が立っていた。