ホテル御曹司が甘くてイジワルです


「いつか、その女の子がまたここに来てくれるといいですね」

できるならその日まで、このプラネタリウムを守り続けたい。
頑張る理由がまたひとつ増えて、胸がかすかに温かくなった。


「そういえば夏目さん。今日はプラネタリウムの仕事はいいからちょっと行ってほしいところがあるんだよね」

館長に言われ、「はい」と返事をする。
行ってほしいところって、どこだろう。観光案内所や役所へおつかいかな?

「もうすぐ迎えの車がくると思うから」

そう付け足され、ますます首をかしげる。


わざわざ車でお迎え?

そう思っていると、自動ドアの向こうで白い車が停まるのが見えた。

見覚えのある高級車に瞬きしている私の横で、館長が笑う。

「あ、ちょうど来たみたいだね」
「ちょうど来たって、もしかして清瀬さんと出かけろってことですか!?」

ぎょっとして横を向いた私に、館長はおだやかに頷いた。

< 91 / 278 >

この作品をシェア

pagetop