なんにもわかってない!
なんにもわかってない!
「はぁ?なにそれ?」
「え?な、なに?」
一瞬にして、俺の不機嫌さを感じたのか少し戸惑っているのがわかる
眉毛を八の字にしている姿に、不機嫌さとは裏腹に気持ちは抱き締めて甘やかせてやりたい
笑顔にさせてやりたい
でも、それは出来ない
何故なら目の前の女………俺の彼女である近藤みどりはたった今俺に「別れ」を言ったのだから
「だ、だって勇治くん私に飽きたでしょ?」
「はぁ?」
もう一度出た声はさっきとなんら変わらない
飽きた、だと?
「どこからのネタだよ、それ」
「…………」
どうせ、社内の女達に要らぬ事を吹き込まれているのだろう
だからと言って、その可愛い口から出た言葉に『わかった』なんて言えるはずもない
別れるなんて俺の辞書にはない
「い、今までも1ヶ月もつかどうかって………」
「それで?みどりとはどれくらいになる?」
「は、半年……」
「だよな?1ヶ月以上だろ?」
だから自分は『特別』とは思わないのか?
それ以前に俺は………
「しかもそれ、いつの話だよ?」
「い、いつって………」
俺の鋭い視線が痛いのかなかなか視線を合わそうとしない
それでも、彼女の口からは別れを告げたままだ
訂正も、無かったことにもなっていない
俺から瞳を逸らしてままの彼女の姿に
その事実に焦りが込み上げてくる
< 1 / 4 >