なんにもわかってない!
なんにもわかってない!




「はぁ?なにそれ?」

「え?な、なに?」



一瞬にして、俺の不機嫌さを感じたのか少し戸惑っているのがわかる
眉毛を八の字にしている姿に、不機嫌さとは裏腹に気持ちは抱き締めて甘やかせてやりたい

笑顔にさせてやりたい


でも、それは出来ない


何故なら目の前の女………俺の彼女である近藤みどりはたった今俺に「別れ」を言ったのだから




「だ、だって勇治くん私に飽きたでしょ?」

「はぁ?」



もう一度出た声はさっきとなんら変わらない
飽きた、だと?




「どこからのネタだよ、それ」

「…………」



どうせ、社内の女達に要らぬ事を吹き込まれているのだろう


だからと言って、その可愛い口から出た言葉に『わかった』なんて言えるはずもない
別れるなんて俺の辞書にはない



「い、今までも1ヶ月もつかどうかって………」

「それで?みどりとはどれくらいになる?」

「は、半年……」

「だよな?1ヶ月以上だろ?」



だから自分は『特別』とは思わないのか?

それ以前に俺は………



「しかもそれ、いつの話だよ?」

「い、いつって………」



俺の鋭い視線が痛いのかなかなか視線を合わそうとしない



それでも、彼女の口からは別れを告げたままだ


訂正も、無かったことにもなっていない
俺から瞳を逸らしてままの彼女の姿に
その事実に焦りが込み上げてくる





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