素直になれない。
日常
次の日。
学校についた私の目の前に立っていたのは、髪をポニーテールにした活発そうな女の子…ではなく、紗香だった。
「おはよぉ、彩奈ちゃん!」
「おはよ、紗香。」
席についた瞬間、私は紗香の笑顔に気づいた。
「ん?」
思わず声が漏れてしまう。
しかし、彼女はニヤニヤと笑みを深めるばかり。
「ねぇ、紗香さ、なんか勘違いしてない?」
昨日に引き続き、和也くんのことじゃ。
「彩奈ちゃんってさ、今まで彼氏とかいたことは?」
うっ。
ほら、やっぱりこういう質問だよ。
私が和也くんに好意を寄せているんじゃないかって、思い込んでる。
「まぁ、一応。」
「えっ、そうなの?じゃあ今はいない?」
目をキラキラさせて質問してくる。
うーん、これはちょっと答えずらいかな。
まぁ、でも、いないのは確かだし。
「いないよ。」
素直に本音を話す。
実際、和也くんとはまだ話したこともないし、好きとかありえない!
「ふーん…」
曖昧な反応をする紗香。
「社交辞令で聞くけど、紗香は?彼氏いたことあるの?」
話をそらすために聞き返すと、紗香はぶんぶんっと首を振った。
「いないいない!こんな私の事好きになる男子なんていないって!」
「…」
そんなことを言ってはいるけど、紗香はとてもスタイルが良くて、美人。
これでモテないはずないと思うけど。
「え、本当?」
「ほんとだよ、まぁ、告られたことはないことはないけど。」
ほらぁ、やっぱり。
相変わらず紗香は笑顔だ。

すると。
私たち以外誰もいなかった教室の扉が開いた。
「和也おはよ!」
「おぅ」
紗香のテンションとは逆に、おとなしめな男の子。
で、私の隣の席の子。
「…」
うっ、気まずい…。
喋ったこともないのに、紗香が明るい声で挨拶なんてするから…。
すると突然、目の前に手が見えた。
「うわぁっ!?」
「神崎さん、ゴミついてる。」
私の前髪をつまみ上げ、埃をとった、その手はやはり和也くんだった。
「あ、ありがと…」
いきなり、喋ったこともないのに、こんなに至近距離で…。
好きなわけじゃないのに、ドキドキしちゃったよ。
「わー、和也優しいね。」
「気になっただけ。ゴミくらいとったっていいだろ。」
紗香と喋っている和也くん。
それを見ていて、私はふっと思った。
「ねぇ、2人って中学校一緒なの?」
紗香はずっと呼び捨てしてるくらいだし、仲良いのかな。
すると、紗香ではなく、和也くんがこちらを振り向いた。
「俺らは、小学校の時にバスケの試合で知り合った。そこからずっと関わりがあって。」
「それでっ、今年同じクラスなの知って、良かったなぁ、って思ったの。」
和也くんから紗香に、引き継いで説明を受けた。
そう、なんだ。
そんなに仲いいなんて、羨ましいな…。
「彩奈ちゃんは、幼馴染とかいないの?」
「えっ…」
幼馴染。
懐かしい。
顔ぶれを思い出す。
その中でこの学校にいるのは…。
「1人だけ。」
紅星翔。
彼は私と家が近くて、ずっと一緒に過ごしてきた。



「あかぼしかける?」
「うん。聞いたことないかな?」
「ないなぁ…和也はある?」
紗香は首をかしげて和也くんの方を見る。
「俺もない…かな。」
「まあ、だよね!」
そんなに有名ってわけじゃない。
小学校の頃から生徒会とかに入ってたすっごく頭のいい男子ってくらい。
家が近くなかったら、ほとんど関わりはなかったんじゃないかな。
でも、幼馴染って言っても…。
特別な関係じゃないし、そこまで話す関係でもない。
マンガとかでよくある幼馴染との恋とか、ありえない!って感じ。
まぁ、見た目はなかなかいいらしいけど。
中学校の時は告られたこともあるとかないとか…。
私からしたらありえない。
告られることなんてまず無いし。
人の恋愛話は好きだけど、だから何。って。
自分には縁のない話だから。
「翔くんってどんな人なの?」
紗香の質問に、私は少し首をかしげて答えた。
「えっとね…」



< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop