冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
私は「もちろん行く」と即答した。了にとって居心地のいい帰省なわけがない。ひとりでなんて行かせるものか。

昼休みが終わりかけていることに気づき、私はせっせと残りのチャーハンを片づけ、ごみをまとめた。


「私、仕事に戻るわ。帰れたら帰ってきて、ゆっくり休んでね」

「うん」


出ていく私に、了が片手を振る。手元のフードボックスの中身の減りは遅い。

事務所は調査のため片っ端からひっくり返され、仕事ができる状況じゃないそうだ。無人にしておくとあまりに好き放題荒らされるため、立ち会って見張っていたいのだと了は言っていた。

調査が始まってから了は自宅に帰っていない。自身の社長室で仮眠はとれるし、シャワー設備も会社にある。とはいえ、どれほどの疲労だろう。


「早織さん」

「え」


うつむいて歩いていた私を前方から呼び止めたのは、ジョージさんだった。よかった、了をひとりにしておくのは心配だった。「早く戻ってあげて」とせっつく私の肩を、ジョージさんが元気づけるように叩く。


「はい。早織さんまでそんな顔をしないでください。了が悲しみますよ」

「実家のお父さまから、了に呼び出しがあったの」


彼の顔がさっと曇った。やっぱり、楽観視できないと彼も感じたのだ。


「了と話します」

「お願い。あと、せめてホテルでもいいから、了を休ませて」

「任せてください。一服盛ってでも、今日はベッドで寝かせます」


思わず笑うと、ジョージさんもにっこり笑顔を返した。

彼と別れ、自分のオフィスを目指す。

本当に、いつになったら父娘が一緒にお風呂に入れる日が来るのか。


* * *


「お前から代表権を取り上げる」


和室の客間で、座卓を挟み、狭間拓氏は息子にはっきりと伝えた。脚に負担がかからないよう、高さのある座椅子に座り、あぐらをかいている。

一見くつろいだ姿ながら、放つ空気は畏怖を誘う。
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