冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています

「すごく乱暴に説明すると、赤字の事業をうちが買い取って、決算後にまた買い戻してもらうっていう取引」

「それで向こうは一時的に赤字がなくなるわけね、なるほど」


そういうことだったのか。ようやく理解した。

ジョージさんが「古典的だよなー」とあきれ声を出しながら、子ども用の椅子でダイニングテーブルの食事に参加している恵にごはんをあげている。


「でも帳簿に書かれてなかったら、お前にわかるわけがない。とばっちりだよ」

「代表であるからには、会社で起こったことはすべて俺の責任だよ。だから代表っていうんだ」

「まじめだな。仕事はどうする気だ?」


了がふうっと背もたれに寄りかかり、天井を見上げた。


「どーしよ」


役員からもはずされるとなったら、再雇用されないかぎり了は無職だ。そして再雇用されたところで、一般社員として働くしかない。

ホールディングスにマイナスイメージがつくことを避けるため、役職を取り上げられたのだ。少なくとも数年、グループ内で了が幹部になることはないだろう。


「本体に来るか? 俺の補佐とか、お前がやりやすいポジションを用意するぜ」

「それはすごくありがたいんだけど……」


まだ眠気が残っているのか、了がごしごしと顔をこすった。ドライヤーを使う気力もなかったらしく、短い髪は湿っている。

珍しく、曖昧な返事ばかりする了に、ジョージさんが同情の視線を向けた。


「伯父さんも容赦ないよな」

「そのやりかたでのし上がった人だからね。俺も息子だからって特別扱いはされたくない。だけど想像を超えて決断が早かったなあ……さすがだなあ」


嘆きつつ、からになったお茶碗をずっと左手に持っているので、「おかわりいる?」と聞いたら、「いる」と弱々しくうなずき、お茶碗を差し出した。


「まあ株主総会までは社長なのよね? 時期は決まったの?」

「まだ」
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