冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
定期総会まで待つのなら半年間は猶予がある。でもすぐに臨時総会を開き、解任決議を急ぐ可能性もある。

ジョージさんが「残念ながら、決まったみたいだぞ」と携帯をいじりながら言った。メール画面をこちらに見せる。


「十二月に臨時総会を開くってさ。来月だ」


了がずるずると椅子の上で崩れ落ちた。




お風呂から上がったら、リビングにいたはずの了が消えていた。書斎にもいない。私は髪を拭きながら、寝室のドアを開けた。

照明を落とした部屋で、了は背中を丸めてカーペットに座り込み、恵の寝顔をじっと見つめていた。


「デカフェのコーヒーでも飲む?」


そっと声をかけると、はっと背筋を伸ばす。戸口の私を振り返り、「うん」と照れくさそうに微笑んだ。

リビングのソファで、コーヒーをひと口飲んだ了が、はーっと深い息をついた。


「ごめんね、こんなことになって」

「了が謝ることじゃないわ。さいわい私には、了が探してくれた仕事があるし。一年くらい主夫をしてくれてもきっと大丈夫よ」


主夫かあ、と了がカップの湯気を見つめる。私は隣に座った。

マンションは了のキャッシュで買ったし、蓄えもある。生活の話で言えば、了の解任は緊急の不安要素ではない。


「半年くらい、やってみようかな。でも働きたいなあ」

「やっぱりおもしろいわよね、仕事は」

「俺、やっと早織の味わった悔しさが、少し実感できたのかもしれないよ」


肩を落として微笑む。私はその腕を抱き、肩に頭を乗せた。そんなもの、理解してくれただけで十分だ。了が同じものを味わう必要なんてないのに。
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