冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
ごまかしついでに、やろうとしていたことを思い出した。


「ちょっと恵を任せていい? コンビニに行ってくる」

「いいよ。どうしたの?」

「Selfishの最新号を買いたいの」


仕事帰りに買おうと思って忘れたのだ。久しぶりに前号を見たら、追いかけたくなってしまった。


「あとで俺にも見せて。いつも会社で買うんだけど、今それどころじゃなくて」

「そうだった、あなたの熱愛相手が出てるんだったわね」

「心配しなくても、あの子は俺には幼すぎるよ」

「心配なんかしてないわよ!」


立ち去りざま、食べているところを髪をぐしゃぐしゃにしてやった。首をすくめて笑う了の頬にキスをする。了が"ここにも"というように顔を向けたので、要求のとおりに唇にも軽いのを落とした。

新婚夫婦みたいでくすぐったい。いや、ある意味新婚よりも初々しいと言えなくもないんだけれど。

念のためスエットからデニムにはき替え、トレンチコートを羽織ってマンションを出た。コンビニはすぐそこだ。

……と思ったのに、なんとそこにはSelfishが置いていなかった。少し足を延ばし、別のコンビニへ向かう。ひんやりした秋の夜気から、コートが身を守ってくれる。ちょうどいい気候で、人々のファッションも冬へ向かうときだ。

二軒目にはあった。棚から一冊取り、ついでに奥にあったぶんを一番手前の目立つ場所に入れ替えてからレジに向かう。袋を断って、雑誌を胸に抱えて店を出ようとしたとき、外の通りを歩く人影に目を留めた。

黒いショートヘア、青みがかったカーキという珍しい色のトレンチコート。


「真紀!」


飛び出して呼び止めた。住宅の並ぶ細い路地。街灯のあかりに照らされた真紀が、ゆっくり振り返った。この間よりおなかが目立つ。

真紀はじっと私に視線を注ぎ、やがて口を開いた。


「あなたにとっては、いい気味でしょうね」

「そんな……」
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