冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
12. The End of the War
「ええー!?」
思わず大きな声を出した。
二時間もたたないうちに戻ってきた了が、ソファに突っ伏している。私は一緒に帰ってきたジョージさんにコーヒーをいれ、ローテーブルに置いた。
「また舞塚の名前が出てきたって、どういうこと?」
「言葉のとおりです。舞塚の命令で、粉飾疑惑の情報を諸方に流したと」
ジョージさんは立ったままコーヒーカップを手に取り、この豆おいしいですね、と目を見開いた。
「祥子さんのお父さまってこと?」
「そうなりますね。どうやら狭間に積年の恨みがあるらしい。おい了、生きてるか」
うつ伏せになっていた了が、ごろんと仰向けになった。口元には痛々しい痣がある。暴れた男に殴られたらしい。よく見たらスーツの肩口もほつれている。
「生きてる。俺にもコーヒーちょうだい」
「ワインでも飲む?」
提案に了の心がぐらっと揺れたのがわかった。ジョージさんも目を輝かす。
「いいですね、僕の日本じゃないほうの祖国は、インフルエンザすらワインを飲んで治します」
私は彼が車で来ていないことを確認し、戸棚からワインとグラスふたつを出した。少し考えて、みっつにした。
「あの男は主犯じゃなかったんだよ。けりをつけるには、舞塚氏に会わないと」
ワインのおかげで、了はみるみる気力を取り戻した。ソファに座り、グラスに向かってため息をつく。
「昔から狭間と仲悪いんだよね……」
「狭間にコンプレックスがあるんだろ。同じ業界に踏み込んだものの、業績では圧倒的な敗北、しかもその差は彼らの代でついたんだ」
「お見合いは向こうから持ち込んだんでしょ?」
ソファの背に浅く腰を預けたジョージさんが、片手を広げた。