冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
向かう先は、彼女の父親である舞塚氏の行きつけというレストランだ。第三火曜日はレストランの定休日で、彼のためだけに個室が用意されるらしい。という情報を、彼女が提供してくれたのだ。
「伊丹さん、父が……本当に、なんてお詫びしたらいいか」
ふいに声をかけられ、私は首を振った。
「お父さまのことを、あなたが謝る必要はないと思う」
「……私のことも責めずにいてくれたと丈司さんから聞きました。もとはといえばあの記事が発端なのに……ありがとうございます」
私は再び首を振った。彼女の装いはますます彼女に似合うものになっている。ジョージさんがルームミラー越しに、私に微笑みかけた。
「了は?」
「現地で合流します。さあ、着きましたよ」
車が滑り込んだのは、都心に点在する閑静な住宅街の一角だった。一見普通の民家だけれど、門灯に店の名前が書いてある。
階段を上り、玄関のドアに手を伸ばしたとき、祥子さんがものすごい勢いでそれを開け、中に飛び込んでいった。
「パパー!!」
慌てて追いかけようとしたところを、ジョージさんに止められる。
「最初はふたりで話をさせてくれと言われているんです。あまり緊密な父娘ではないのでね」
「そうか……そうよね」
しかし、漏れ聞こえる怒声と物音がどんどん激しくなってきたため、間を置かず私たちは奥の間に急いだ。
「パパは負け犬よ! 人の粗探しばかりしてるから、だれにも信頼されてない。いい加減それを認めて出直したらどう!」
「未熟な小娘が生意気な口を叩くな」
室内は簡素な和室だった。座卓を前に、スーツ姿の男性があぐらをかいている。年の頃は了のお父さんと同じくらいだ。しかしずっと小柄で、いつも世の中に不平を漏らしているような、余裕のない顔つきをしている。
祥子さんは正面に仁王立ちし、今にもなにかを掴んで投げつけそうに見えた。
「大学に行けば『お遊び』、仕事をすれば『社会勉強』。とにかく人を下に見たくて仕方ないのよ、そのためなら事実なんてどうでもいいの」
「伊丹さん、父が……本当に、なんてお詫びしたらいいか」
ふいに声をかけられ、私は首を振った。
「お父さまのことを、あなたが謝る必要はないと思う」
「……私のことも責めずにいてくれたと丈司さんから聞きました。もとはといえばあの記事が発端なのに……ありがとうございます」
私は再び首を振った。彼女の装いはますます彼女に似合うものになっている。ジョージさんがルームミラー越しに、私に微笑みかけた。
「了は?」
「現地で合流します。さあ、着きましたよ」
車が滑り込んだのは、都心に点在する閑静な住宅街の一角だった。一見普通の民家だけれど、門灯に店の名前が書いてある。
階段を上り、玄関のドアに手を伸ばしたとき、祥子さんがものすごい勢いでそれを開け、中に飛び込んでいった。
「パパー!!」
慌てて追いかけようとしたところを、ジョージさんに止められる。
「最初はふたりで話をさせてくれと言われているんです。あまり緊密な父娘ではないのでね」
「そうか……そうよね」
しかし、漏れ聞こえる怒声と物音がどんどん激しくなってきたため、間を置かず私たちは奥の間に急いだ。
「パパは負け犬よ! 人の粗探しばかりしてるから、だれにも信頼されてない。いい加減それを認めて出直したらどう!」
「未熟な小娘が生意気な口を叩くな」
室内は簡素な和室だった。座卓を前に、スーツ姿の男性があぐらをかいている。年の頃は了のお父さんと同じくらいだ。しかしずっと小柄で、いつも世の中に不平を漏らしているような、余裕のない顔つきをしている。
祥子さんは正面に仁王立ちし、今にもなにかを掴んで投げつけそうに見えた。
「大学に行けば『お遊び』、仕事をすれば『社会勉強』。とにかく人を下に見たくて仕方ないのよ、そのためなら事実なんてどうでもいいの」