冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「まあつまらん金のごまかし自体は、この了及び我々の失態だ。どうせなら粉飾自体もお前が仕込むくらいしてみればいいものを、情報をあちらからこちらへ移しただけでなにかしてのけたつもりか。お前は卑小だ、昔から」
舞塚氏の顔が、悔しそうに歪んだ。
「その卑小さが商売にも出ている。お前が生まれ変わらない限り、我々には勝てん」
「わざわざここまで威張りに来たか」
「いやいや」
店員さんが、高さのある座椅子を持って入ってきた。袖机と一緒に舞塚氏の対面に置き、おしぼりとお猪口、徳利をセットしていく。了に介助され、拓氏はその椅子にゆっくりと座った。
「今日はお前に、引退を促しに来たんだよ」
お猪口を持ち上げ、にやりとする。ジョージさんが徳利を傾け、日本酒を注いだ。
「老兵は去るべきだ。後進に道を譲れ。俺は身体がこうなって、やむなくの引退だったが、この倅や甥たちがのびのびやっているのを見るのは悪くない」
手でぞんざいに指示された了とジョージが、顔を見合わせちょっと笑う。「だが俺は歩くのもこのざまだ」と拓氏は疲れた息をついた。
「舞塚よ。お前は身体が利くうちに去れ。残りの人生で細君にこれまでの恩返しをしろ。娘や息子を、自由にしてやれ」
祥子さんが、はっと目を見開いた。父親を見るが、父親は目の前のライバルを凝視していた。
大きくない和室に、大人が四人も突っ立っているという空間にも、眉ひとつ動かさず店員さんが再びやってきて、濡れた座卓を拭き、食事を並べはじめた。
「お前は卑小だが、腐ったままいっこうにぶれない心根は感心せんでもない。今日は同窓会だ。飲むか」
じっと沈黙したあと、舞塚氏が自分の徳利に手を伸ばした。それをさっと引き取り、お猪口に注いだのはジョージさんだった。膝をつき、お得意の、感じがいいけれど圧のある笑みを浮かべ、舞塚氏を見上げる。
「いずれご挨拶に上がります、お義父さん」
舞塚氏はぎょっとしたように身体を揺らし、それから自分の娘を見た。
「僕はあなたの嫌いな狭間の人間です。お望みでしたら舞塚になりますよ。悪くないお話でしょう?」
舞塚氏の顔が、悔しそうに歪んだ。
「その卑小さが商売にも出ている。お前が生まれ変わらない限り、我々には勝てん」
「わざわざここまで威張りに来たか」
「いやいや」
店員さんが、高さのある座椅子を持って入ってきた。袖机と一緒に舞塚氏の対面に置き、おしぼりとお猪口、徳利をセットしていく。了に介助され、拓氏はその椅子にゆっくりと座った。
「今日はお前に、引退を促しに来たんだよ」
お猪口を持ち上げ、にやりとする。ジョージさんが徳利を傾け、日本酒を注いだ。
「老兵は去るべきだ。後進に道を譲れ。俺は身体がこうなって、やむなくの引退だったが、この倅や甥たちがのびのびやっているのを見るのは悪くない」
手でぞんざいに指示された了とジョージが、顔を見合わせちょっと笑う。「だが俺は歩くのもこのざまだ」と拓氏は疲れた息をついた。
「舞塚よ。お前は身体が利くうちに去れ。残りの人生で細君にこれまでの恩返しをしろ。娘や息子を、自由にしてやれ」
祥子さんが、はっと目を見開いた。父親を見るが、父親は目の前のライバルを凝視していた。
大きくない和室に、大人が四人も突っ立っているという空間にも、眉ひとつ動かさず店員さんが再びやってきて、濡れた座卓を拭き、食事を並べはじめた。
「お前は卑小だが、腐ったままいっこうにぶれない心根は感心せんでもない。今日は同窓会だ。飲むか」
じっと沈黙したあと、舞塚氏が自分の徳利に手を伸ばした。それをさっと引き取り、お猪口に注いだのはジョージさんだった。膝をつき、お得意の、感じがいいけれど圧のある笑みを浮かべ、舞塚氏を見上げる。
「いずれご挨拶に上がります、お義父さん」
舞塚氏はぎょっとしたように身体を揺らし、それから自分の娘を見た。
「僕はあなたの嫌いな狭間の人間です。お望みでしたら舞塚になりますよ。悪くないお話でしょう?」