冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「たとえば、ここ」

「あ!」


目の前で、白い光が弾けたようになって、涙が浮かんだ。身体の奥の、どことも言えない場所から広がる甘い痺れに、背中をそらしてじっと耐える。了が励ますみたいに私の顔にたくさんキスをした。


「前はちょっと痛がってたのにね」

「やめて、やめて!」

「やめない」


くり返し揺さぶられ、頭がおかしくなりそうだった。ぎゅっと閉じていた目を開ける。霞む視界の中、微笑む了の瞳には、からかいの色が浮かんでいるとばかり思ったのに、実際には、熱を宿した余裕のない眼差しがあった。


「今の早織を全部確かめるまで、やめないよ」


キスも熱い。呼吸すら確かめようとするみたいに。

汗で濡れた了の身体に、ずっとしがみついていた。了は私を抱え込むようにして、全身で抱きしめた。両手を私の頭の上で組み、その中でキスをする。それは逃がさないよ、と言っているようでもあり、ここにいればいいよ、と安心させているようでもあった。

何度悲鳴をあげたかわからない。

私が指ひとつ動かせず、ぐったり横たわっていると、了が戻ってきた。いなくなっていたことにも気づかなかった私は、重い瞼を持ち上げた。


「試しに家につれてってみたら大丈夫そうだから、今日は泊めるって、真琴さんから」


下着姿の了が私のそばに腰を下ろし、ペットボトルの水を飲んだ。身を屈め、私に口づける。冷たい水が喉に転がり落ちてきた。

口からこぼれたぶんを、了がなめる。顎、首、……胸元。


「もう無理よ」

「それが言えるうちは平気だよ」

「了ってそんなしつこかった?」


思わずにらんだけれど、了にこたえた様子はない。


「早織が俺のなにを知ってるの」

「なにって……」

「俺たち、一度しかしてないんだよ。まあ、なにを一度というか難しいけど。少なくとも、ひと晩しか一緒にいたことないんだ」
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