冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
隣に寝そべり、腕に頭を乗せて、了は私の顔をのぞき込んだ。


「これからいろいろ探すんだよ。楽しいよ。知ってる? 身体ってね、相手をおぼえるんだ。形もだし、タイミングとかくせも。ひとりの相手とたくさんすると、どんどん相性がよくなってくんだよ」

「経験談?」

「違うよ!」


ふくれた声を出す、了の耳が赤らんだ。どうだか。まあいい、過去はどうあれ、この先もう、了が私以外のだれかをこうして抱くことはないのだ。

不思議な感じだ。私はこれから生涯、了としか抱き合わない。了も私だけ。なにが起こるかわからない人生で、それだけは決まった未来。


「安心する……」

「俺のあげたペンダント、まだ持ってる?」


急に話題が変わったので、私は目をしばたたいた。了が指先で、私の鎖骨の中央をくるくるとなでる。ちょうどペンダントトップが来るあたりだ。


「……うん」

「どこにある?」


私はクローゼットを指さし、「下の引き出し」と伝えた。了がそこへ行き、ビロードの箱を手に戻ってくる。


「ずいぶんすぐ出せるところにしまってあるね」

「うるさいな」

「つけてあげるよ、いい?」

「いきなりどうしたの?」


片腕をついて、みしみし言っている身体を起こした。了が金具を外し、私の首に両手を回してペンダントをつける。うなじに手が触れて、髪を切ったことを思い出した。


「うん、似合う」


了はうれしそうに目を細める。チェーンが短いので自分では見えない。私は指で探って、小さな石が胸元にあることを確かめた。
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