冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
了は当然、その質問を予期していたんだろう。きゅっと表情を引き締め、だけどだけどすぐに自信なさそうに、『あくまで僕の感じたことです』と断りを入れた。


『伊丹さんは、戦場にふさわしい戦闘服をまとってらっしゃいますが、基本的には争いを好まず、その……柔らかい方です。ご自身でもそれをご承知なので、普段は意図的に隠しています。でもおそらく、全部をさらけ出せる相手が身近にいらっしゃるんじゃないかと。安心感が根底にあるのを感じます』


驚愕で、いつの間にかカクテルが自分の前に置かれていたことに気づかなかった。呆然としたまま乾杯し、なぜか恥ずかしそうにしている了を凝視する。


『あの、違いましたか』

『いえ……ええと』


合っています、とは答えづらかった。彼は『柔らかい』と言葉を選んだけれど、要するに私は、イメージに反して気が小さい、見かけ倒しの女なのだ。

了は私の心理を読んだように、遠慮がちに微笑んだ。


『僕の仕事は、人を見る目がないとやっていけません。ですからそこに関しては慎重ですし、自信もあります』

『そのようですね』

『僕はけっして、容姿やステータスであなたを選んだわけじゃありません。そう思われるのは僕にとっても侮辱ですし、伊丹さん、あなた自身への侮辱でもある』


せっかくのカクテルの味がしない。

了はスツールの上で、私のほうへ身体を向けた。


『僕はきっとまたあなたをお誘いします。あなたには断る自由がある。その代わり、来ていただけたら僕は期待します。男として』


私の返事を待たず、ただ言葉が伝わっていることだけは、じっと私の目を見て確認し、了は静かに言った。


『そういうつもりで僕と会ってください』


次に会うとき、私は真紀に報告しないだろうと思った。

< 15 / 149 >

この作品をシェア

pagetop