冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
信じられる?
この時代に、かくも奥ゆかしく直球な恋愛ゲームの始まりがあるなんて。
まさにゲームだった。ひたむきで朴訥で、甘いゲーム。
了は月に2回は、必ず私を誘い出した。飛ぶように日々が過ぎていくこの生活で、月2回というのはかなり頻繁だ。
私たちは仲よくなった。
たくさん話した。ふたりのときは『早織』『了』と呼び合うようになった。
コートを着る季節は終わり、ジャケットも脱ぎ捨てて、着るものが薄く、軽くなっていく。つられるように距離も縮まり、了の車の中ではじめてのキスをした。
初夏だった。
ドライブの途中、コーヒーショップでアイスコーヒーをふたつ買い、車に駆け戻った私を、運転席の了が迎え入れた。コーヒーを受け取る代わりに、なぜか彼は私の腕をつかみ、サングラスをとった。
前触れのないキスだった。優しくて清潔な、了の性格そのままのキス。
私が嫌がっていないことをたしかめるように、一度離れて、またゆっくり重なる。私は両手がふさがったままで、頬をなぞる了の指に身を震わせた。
『あの、俺、勘違いしないから。大丈夫』
日中の駐車場。キスを終えた了は、運転席に身を沈め、顔を赤くした。
『早織がはっきり言ってくれるまでは、俺たちは、その、こういうこともできる友達だと思ってるから。勝手に勘違いして突っ走ったりしないから。安心して』
生真面目な顔が、きゅっと唇を噛む。
『でも、ずっと期待はしてるから。早織の気持ちが決まったら、教えて……』
驚いたことに、出会ってから一年がたつまで、私たちはこんな関係を続けた。キスはたくさんしたけれど、それだけ。