冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
了は、その先に進みたい気持ちを隠しはしなかった。だけど無理強いもしなければ、変に私をその気にさせることもしなかった。

ただただ私が『もうそろそろだね』と言うのを待っていた。だけど私は、もったいなくてなかなか言えなかった。

心地よかったのだ。了が示してくれる、丁寧な好意と愛情が。

攻撃も防御も必要なく、思うままに話して笑える、了との時間が。

少しずつ少しずつ、近づいていくふたりの距離が。

私は了が好きだった。




『謝恩会の招待状、届いた?』

『ああ、もらったよ。たぶんまた途中だけ顔を出すと思う』


はじめてのキスから半年がたつ頃、いつものように仕事帰りに会ったとき、そんな話になった。私たちが出会った謝恩会。あれから一年。

偶然にも私と了の家は近く、またお互いの勤め先も近かった。つまりとても行き来がしやすく、私たちはどちらかの家で、寝るまでのひとときを過ごすことが多くなっていた。

この日は了のマンションにいた。広々とした1LDK。座面の広い黒い革のソファが私のお気に入りで、うずくまるように座って、テレビを見ながらアイスを食べていた。


『なにか飲む?』


背後のキッチンから声をかけてくる了に、振り返りもせず『了と同じの』と返す。


『俺、明日休みだからウィスキーいくけど』

『ダメ。私は明日早いの』

『なにその勝手?』


あきれ声を出しながらも、了が持ってきたのは、ふたつのグラスに入ったスパークリングワインだった。
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