冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
前を向いたまま、了がうなずく。


『俺、パーティーから仕事に戻るけど、終わったらそのバーに行く。早織も来て』

『でも私、パーティーのあとでお得意様に呼ばれてるの、おつきあいしないと』

『待ってるよ』

『何時になるか……』 

『何時になっても待ってる』


了がこういう頑なさを見せたのは久しぶりで、私ははっとした。

一年。

彼は待ったのだ。

次の一年をどういう関係で過ごすか、決めたがっているのだ。

私は、了の腿に手を置いた。


『部屋をとって待ってて』


了がぱっとこちらを向いた。その目が、期待と困惑に揺れているのがわかる。


『……いいの?』

『うん』

『ほんとに……?』


私はもう一度、『うん』とうなずき、了の手からグラスを取って、自分のと一緒にローテーブルに置いた。


『東側の部屋にしてね。朝は日が入らないと起きられないから』


了が私を抱きしめた。私も抱きしめ返した。
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