冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「なあ、なにが悪いの? 俺は自分が悪いと思ってる。早織の人生を変えちゃったことに対してだよ。でも早織はどんな悪いことをしたの?」
「きれいごと言わないでよ」
「子どもがいることが悪いの? そのプロデューサーさんだって三人もいるんでしょ。なにが違うの? 結婚してるかどうか? ほんとにそこ?」
「私は負けたの!」
顔を上げると、愕然とした表情の了が見返した。
「……女の人って、いつも、よくわからないなにかと戦ってるよね」
「そうよ。女はね、社会に出て男と対等に働くことにしたとき、決めたの。お互いを監視しようって。『これだから女は』って言われるようなことをしてる女がいないか、見張っていようって」
「そんな……」
「女同士だからって甘えは許されない。むしろ男性の目より厳しくチェックしなきゃいけない。"女"の使いどころを間違えて足を引っ張る女は、みんなの敵」
急に全身から力が抜けた。腰を浮かせていた私は、へなへなと座り込んだ。了のシャツを掴んでいた手も、ぽとんとひざの上に落ちてくる。
「私はその戦場から、脱落したの。敗残兵が戦場のルールに文句をつけてなにになるの? まだ戦ってる人たちに対して、なにが言えるの?」
だけど、最近考える。
"みんな"って、誰だったんだろう。
私たちは、なにと戦っていたんだろう。なにが欲しかったんだろう。
誰か今でもそれを、はっきり説明できるだろうか。
「せめて結婚してたらと思ったことはあった。でもあまり変わらなかったと思う。事実、Selfishの編集部に子どもを持っている女性はいないわ。自分から辞めていくか、私みたいにはじき出されたから」
私は人の進退を決める立場になかったから、自分が彼女らを追い出したとは思っていなかった。だけど決める立場にあっても、同じことをしたと思う。
なんの疑問も持たず。むしろそのほうが彼女たち本人のためになると信じて。
「私に誰を責める権利がある? どこに不満を言う資格がある?」
「なんでも我慢しなきゃいけない義務だって、ないように見えるよ」
「誤解しないでね、今の仕事は楽しいの、本当に。不思議とやりがいもある」
「きれいごと言わないでよ」
「子どもがいることが悪いの? そのプロデューサーさんだって三人もいるんでしょ。なにが違うの? 結婚してるかどうか? ほんとにそこ?」
「私は負けたの!」
顔を上げると、愕然とした表情の了が見返した。
「……女の人って、いつも、よくわからないなにかと戦ってるよね」
「そうよ。女はね、社会に出て男と対等に働くことにしたとき、決めたの。お互いを監視しようって。『これだから女は』って言われるようなことをしてる女がいないか、見張っていようって」
「そんな……」
「女同士だからって甘えは許されない。むしろ男性の目より厳しくチェックしなきゃいけない。"女"の使いどころを間違えて足を引っ張る女は、みんなの敵」
急に全身から力が抜けた。腰を浮かせていた私は、へなへなと座り込んだ。了のシャツを掴んでいた手も、ぽとんとひざの上に落ちてくる。
「私はその戦場から、脱落したの。敗残兵が戦場のルールに文句をつけてなにになるの? まだ戦ってる人たちに対して、なにが言えるの?」
だけど、最近考える。
"みんな"って、誰だったんだろう。
私たちは、なにと戦っていたんだろう。なにが欲しかったんだろう。
誰か今でもそれを、はっきり説明できるだろうか。
「せめて結婚してたらと思ったことはあった。でもあまり変わらなかったと思う。事実、Selfishの編集部に子どもを持っている女性はいないわ。自分から辞めていくか、私みたいにはじき出されたから」
私は人の進退を決める立場になかったから、自分が彼女らを追い出したとは思っていなかった。だけど決める立場にあっても、同じことをしたと思う。
なんの疑問も持たず。むしろそのほうが彼女たち本人のためになると信じて。
「私に誰を責める権利がある? どこに不満を言う資格がある?」
「なんでも我慢しなきゃいけない義務だって、ないように見えるよ」
「誤解しないでね、今の仕事は楽しいの、本当に。不思議とやりがいもある」