冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「さおちゃん、つくり置きのおかず持ってきたよー……あら?」


紙袋の中身を見ながら部屋に入ってきたその人物は、私に胸倉を掴まれている了を見下ろし、きゃっと小さく悲鳴をあげた。


「ごめん、彼氏が来てたんだ? すぐ出てくから……」

「ううん、彼氏じゃない」

「え? じゃあどなた……」


そこで思い当たったらしい。はっきりしたピンク系のメイクが施された顔が、鬼の形相になる。ドスの効いた声が響いた。


「てめえ、まさか恵の父親か」

「えっ、あの、僕は……えっ? えっ?」


シフォン素材のタイトなワンピースを着た美女が、突然凄みをきかせてきたため、了はすっかり混乱している。


「今までどこでなにしてやがった。今さら頭下げて済むと……」

「まこちゃん、落ち着いて。これから事情聴取だから。シメるのはそのあと」


どうどう、となだめると、まこちゃんは大きく踏み出していた脚をしゅっと引っ込め、「あっ、そうだったんだね」とかわいらしく肩をすくめた。

ワンピースのすそを払って直し、私の隣に正座する。


「はじめまして、早織の兄の真琴(まこと)です」


了は呆気にとられた顔で、ぽかんとしていた。


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