冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
04. ウェディング・ロード
目の前の、ワンピースを着た華奢な美人が"兄"と名乗った混乱が、了を襲ったのが想像できた。だけどそれを表に出すほど、彼は軽率でも無礼でもなかった。
そして忘れてはいけない、なんといっても了は、芸能事務所の社長なのだ。
「はじめまして、狭間了と申します」
瞬時に自分を立て直し、了はきちんと正座をして、カーペットに手をついた。
まこちゃんのほうが「あら」と戸惑っている。
「おっしゃるとおり、僕が恵の父親です。どんな形であっても、この責任は必ずとらせていただきます。これまでご連絡もせず、早織さんひとりにすべてを負わせたことを、お詫びします。本当に申し訳ございません」
深々と頭を下げる。内容も見た目も、じつに誠実で男らしく、美しい謝罪だった。
「……ちゃんとした方じゃない」
まこちゃんが感心したように言う。
「ちゃんとした方よ。社会的には」
「男性的には?」
「このあとの話次第ね。了、顔を上げて、あなたの話を聞かせてよ」
了が少しだけ身体を起こした。説明の糸口を考えているのか、カーペットについた手に視線を落として、じっとしている。
やがて背筋を伸ばし、軽く握った両手を腿の上に置いた。
それから了が語った彼の事情は、私にとって本当に──本当に、驚くべき事柄の連続だった。