冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
「狭間になってわかったんですが、この苗字、とても便利なんですよ」
「ソレイユグループにお勤めなの?」
「ジョージは本体の執行役員だよ。俺と同い年。早織ならこのすごさがわかると思うけど」
わかる。本体というのは、グループの母体であり最大の会社である"ソレイユ・コーポレーション"のことだ。超成果主義の合理的な社風によって、若い役員も多いけれど、それでも三十代後半から四十代だ。
ジョージさんは最年少に違いない。抜擢に狭間姓が考慮されるような会社じゃない。了だって後継者扱いをされてはいるけれど、期待に見合わない働きをしたら即、見切りをつけられるだろう。
そんな世界で狭間姓であることは、いろんな説明の手間が省けて楽なぶん、足枷にもなるはずだ。それを『便利』と言い切る豪胆さ。
ふてぶてしさと言うべきか。
そしてたしかにその関係で、私と了の結婚後に私の義弟となるかは怪しい。というかたぶん、ならない。
「了の妹さんって、かなり年下じゃなかった?」
了が「よくおぼえてるね」と驚いた顔をする。昔、かわいがっている十歳下の妹の話をよく話を聞いた。つまりまだ学生のはず。
「その妹は、留学生活を満喫中だよ。ジョージと結婚したのはそっちじゃなくて、上の妹。すぐ下にいるんだ」
「そうだったの」
そういえばそんな話も聞いたかもしれない。
「しっかりした奴でさー。親父のゴタゴタで久しぶりに顔合わせたけど、まあ強い強い。だいぶ助けてもらったよ」
「あ、会ったんだ?」
うれしそうな声を出したのはジョージさんだ。
「どう、元気にやってる?」
「やってるよ。ジョージにもよろしくって言ってた。会わせてやれなくてごめんな、ちょっと、人と連絡とってる状況じゃなくてさ」
「いいよいいよ、想像つくから。それよりこれ」
持っていた書類フォルダーから、彼がA4サイズの封筒を取り出し、テーブルに置いた。私と了の視線は自然とそこに寄る。
「お前の結婚を止めた理由だよ」
了が目だけ、義弟のほうに上げた。そのまま無言で封筒に手を伸ばし、中から数枚の書類を出す。見たことのある風景の写真が印刷されていた。了は、はーっとため息をつき、うなだれた。
「油断した……」
「このマンションの契約はやめろ。新しいところをさがせ。できたらなるべく代理人を使って」
「ソレイユグループにお勤めなの?」
「ジョージは本体の執行役員だよ。俺と同い年。早織ならこのすごさがわかると思うけど」
わかる。本体というのは、グループの母体であり最大の会社である"ソレイユ・コーポレーション"のことだ。超成果主義の合理的な社風によって、若い役員も多いけれど、それでも三十代後半から四十代だ。
ジョージさんは最年少に違いない。抜擢に狭間姓が考慮されるような会社じゃない。了だって後継者扱いをされてはいるけれど、期待に見合わない働きをしたら即、見切りをつけられるだろう。
そんな世界で狭間姓であることは、いろんな説明の手間が省けて楽なぶん、足枷にもなるはずだ。それを『便利』と言い切る豪胆さ。
ふてぶてしさと言うべきか。
そしてたしかにその関係で、私と了の結婚後に私の義弟となるかは怪しい。というかたぶん、ならない。
「了の妹さんって、かなり年下じゃなかった?」
了が「よくおぼえてるね」と驚いた顔をする。昔、かわいがっている十歳下の妹の話をよく話を聞いた。つまりまだ学生のはず。
「その妹は、留学生活を満喫中だよ。ジョージと結婚したのはそっちじゃなくて、上の妹。すぐ下にいるんだ」
「そうだったの」
そういえばそんな話も聞いたかもしれない。
「しっかりした奴でさー。親父のゴタゴタで久しぶりに顔合わせたけど、まあ強い強い。だいぶ助けてもらったよ」
「あ、会ったんだ?」
うれしそうな声を出したのはジョージさんだ。
「どう、元気にやってる?」
「やってるよ。ジョージにもよろしくって言ってた。会わせてやれなくてごめんな、ちょっと、人と連絡とってる状況じゃなくてさ」
「いいよいいよ、想像つくから。それよりこれ」
持っていた書類フォルダーから、彼がA4サイズの封筒を取り出し、テーブルに置いた。私と了の視線は自然とそこに寄る。
「お前の結婚を止めた理由だよ」
了が目だけ、義弟のほうに上げた。そのまま無言で封筒に手を伸ばし、中から数枚の書類を出す。見たことのある風景の写真が印刷されていた。了は、はーっとため息をつき、うなだれた。
「油断した……」
「このマンションの契約はやめろ。新しいところをさがせ。できたらなるべく代理人を使って」